秋の夜長、家族でボードゲームを……という趣旨の記事をこれから書くのだけど、私は正直全くできていない。ちなみにこちらの写真は、娘がまだ小さい頃。ああ、懐かしい。夫が「仕事じゃない時間に頭を使いたくない」というタイプなので、無理強いをするのもできず指をくわえてボドゲ棚を見つめるのみ。コンピューター相手にブロックスやカタンもやってみた。おもしろい、おもしろいんだけど、対人でやるボドゲという贅沢を１度体験してしまうと、人との心理戦を欲する自分を感じる。人と人がぶつかり合い、盤上に物語が生まれるからこその悔しさと歓喜なのだ。

３歳の娘とは幼児向けのボードゲームをやったり、ルールを３歳にも理解できるレベルにして一緒に遊んだりしているけれど（KATAMINO、ブロックス、DR.EUREKA、テディ・メモリーなど）、私は「この一手で場がひっくり返るぞ」という緊張感や「このゲームバランスすげええ神！」とルールの芸術にひれ伏したいのです。

というわけで、ここからオススメのボドゲを紹介します。

「モダンアート」はプレイヤーが画商となり、絵を売買してお金を稼ぐゲーム。やりたい。それぞれ持ち札のポップアートの価値は流行によって上下し、それを読みながら高く売ったり、安く買い付ける。時には自分で流行を作り出して、手札の価値を高めたりできる。面白いに決まっている。そりゃそうです、ドイツの天才ゲームデザイナー、かのクニツィアの作ですから。ああやりたい。

そしてこちらは、私がボドゲにハマったきっかけのゲームでもあります。めっちゃ上手い友人がプレイ中私を１位と錯覚させて私にヘイトを集め、結局実は友人がずっと１位を走っていたという……悔しすぎる負け方をして「も、もう一回！」となったわけです。３人からでもできるし、そこまで重くないのでご家族で是非。

陣取りにポーカーの要素が入ったゲーム「バトルライン」。この１行だけでも、もう面白いと確信できることでしょう。２人用なので友人と集まりにくい今にもピッタリ。まあ我が家は無理なのですが……。やりたい。このゲームもクニツィア作です。９つのフラッグという限られた陣地を奪い合う、ということは、どのカードを捨てるのか選択がシビアになるということ。何を取るかはできても「何を捨てるか」は、麻雀などをやっていないとなかなか身につかない感覚で、でも生きる上で超大事だったりもするのでお子さんにもオススメです。ちなみに２人でできるゲームだと「タギロン」「コリドール」「クアルト！」もオススメです。文字数的に説明できないのが、悔しい。

言語センスがものをいうゲーム「横暴編集長」。ボードゲームは数字のイメージが強いかもしれないけれど、ワード系のゲームもたくさんあり、どれもこれも「そのゲームでしかできないコミュニケーション」がある。そこから見えるは、他者の意外性と魅力。これは上の句と下の句の手札を組み合わせ、誰が一番面白そうな本のタイトルを作るのかを競います。このゲームの他にも「たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。」では、ぐっとくるプロポーズの言葉をふだで作って競い合ったり、「ボブジテン」では英語を使わずにカタカナ語を伝わるように説明しあったり、「へんなかんじ」では漢字が存在しないカタカナの漢字を作ったり。やりたい。

こちらもオススメなのが、世界中に拡大しようとする感染症の根絶が目的で、プレイヤー同士が協力して４種類の病原体全てのワクチンを発見するゲーム「パンデミック」。友人のパンデミックで遊んだので我が家にはなく写真がないのですが……。かわりに、いつかの我が家のボドゲ棚の前で撮影した、夫と娘を。

「パンデミック」の難易度の高さは、どれだけ感染症の根絶が難しいのか痛感させられます。だからこそクリアした時の喜びは、ひとしお。まさに今、おすすめです。協力系といえば、先日出た怪獣災害ゲーム「レヴィアス」がめちゃくちゃ気になってます。そうそう、１人でもできるけれど協力して謎を解く「EXIT」シリーズもおすすめです。家でできる謎解きで１度プレイするともうできなくなるのも良い。

やりたいやりたいばっかり書いてしまい申し訳無いのですが、ボードゲームできる環境のかた！　こんなにも素晴らしい、人間の知恵と思考と好奇心により生み出された芸術を堪能できるチャンスを棒に振るのも勿体無いので、是非、是非私の代わりにプレイしてくださいね。

犬山紙子

イラストエッセイスト。愛犬家、愛酒家。

2017年1月に長女出産。トホホな生態を持つ友人の美女たちを描いた『負け美女』（マガジンハウス）でデビュー。女性や恋愛について鋭くかつ面白おかしく斬る独自の目線が話題に。数多くの著書や連載を抱える。近年は執筆業のみならずTVコメンテーターとしても活躍。『スッキリ』（日本テレビ系）、『ワイド！スクランブル』（テレビ朝日系）、『報道ランナー』（関西テレビ）にて日替わりコメンテーターとして毎週出演中。

Instagram：＠inuyamakamiko