今回修復を試みるのは、このように真っ二つに割れてしまったお茶碗。割れた際のかけらもありますが、さて、うまく修復できるのでしょうか……。
まずは割れた断面に薄く、中心に線を引くように接着剤を塗布していきます。
ピタッとはまる位置を見つけたら、両サイドからじんわり力を加えた状態で5分ほどキープ。接着剤はすぐ固まらないので、ゆっくりで大丈夫。面から接着剤がはみ出してくることがありますが、後できれいにできます。
ちなみに古典技法による金継ぎは、本漆の樹液に小麦粉と水を混ぜた麦漆というもので接着するため、固まるのに1週間ほどを要します。現代技法では接着剤を使うので、乾燥するまではたったの5分ほど。すぐ次の工程に移ることができ、気軽にトライできるというわけです。
接着する5分を待つ間に、金継ぎの歴史を聞きます。なんと、縄文時代に漆で器をつけた跡が見つかっていたりもするそう。また、古田織部があえて器を割って継ぎ直していたというエピソードもあるそうです。
……という話を伺っていたところで、5分が経過。
接着した部分を綺麗にして、接着の工程までが完成しました。ピタッとくっついてる!
続いて、欠けの部分の埋め作業に移ります。使用するのは、エポキシ樹脂。少し硬いですが、指の腹に力をかけてねりねり。エポキシ樹脂は10分くらいで固まってしまうため、固まらないうちに欠けているところに埋め込んでいきます。
竹串も使っていきます。転がすようにしながら厚みを取り除き、表面を整えていきます。表面に竹串の跡がついてしまっても、後でヤスリをかけるのでそこまで気にしなくて大丈夫。
竹串でならしたり指の腹でおさえたりして、なるべく器に添わせていきます。ある程度平らになったら完了!
この状態で水漏れがないことを確認するために、実際に器に水を入れてみます。水を入れて3分ほど待って、水が漏れなければOK。接着が甘いところがある場合は水漏れする場合があるそうですが、今回は大丈夫そう。下の薄紙に水が染み込んできません。なんだか、うれしい……!
次に、紙ヤスリで表面を研いでいきます。エポキシ樹脂をつけたところに指で水をつけ、少し水で湿った状態になったら、紙ヤスリを上げて滑らかにしていきます。
こちらの器は周りに装飾があるデザインなので、そこがヤスリで削れてしまわないように、マスキングテープで保護しつつ……。
ヤスリのかけ具合がどうかを先生に見てもらいながら、進めます。エポキシ樹脂の部分がなだらかになったら、完了!
削った後の粉を拭き落とすためにウェットティッシュで全体を濡れ拭きし、仕上げにキッチンペーパーで乾拭きをします。
そしていよいよラストの、合成うるしを乗せる工程です。金粉(真鍮)と合成うるしが混ざったものを塗っていきます。古典技法による金継ぎの場合は、本漆を塗った後に金粉を蒔いていく「蒔絵」という技術で金粉をつけていきますが、これがかなり技術を要するとか。今回の現代技法による金継ぎでは、あらかじめ合成うるしと金粉が混ぜられたものを塗り、補修を行います。塗って固まるのを待つだけなので仕上がりがわかりやすく、初心者でもトライしやすい。すぐ乾かないので、はみ出した部分を修正することもできます。
持ち上げて、いろいろな角度から見ながら、仕上げていきます。「とても綺麗です」と、先生に褒められました! エポキシ樹脂で修復した面の部分にも、塗っていきます。「塗り方はデザインなので、自由に楽しみながら」と先生。難しいけれど、楽しい!
満足する仕上がりになるまで合成うるしと金粉が混ぜられたものを施していき、完成へと進めます。ここまでで、だいたい2時間くらいでした。こちらで完成です!
乾くのに10日間かかるので新聞紙やタオルなどには包まず、ダンボールまたは紙袋にマスキングテープで固定した状態で持ち帰ります。自宅でも梱包した状態で、10日間触らないように置いておきます。