現代においても世界中で支持されるファッションアイコン。そして“20世紀の妖精”という異名を持ち、今もなお、新鮮な魅力を放ち続ける女性たちの永遠の憧れ、オードリー・ヘップバーン。そのタイムレスな魅力に触れるならば、やっぱり『ティファニーで朝食を』ははずせません。
大都会ニューヨークでリッチな男性との結婚を夢見る娼婦ホリー。彼女の暮らすアパートにある日、作家志望の青年ポールが引っ越してくる。型にはまらない独特な魅力を持つホリーにポールは惹かれるけれど、ある日突然ホリーの夫と名乗る男性がテキサスからやってきて……。
自由奔放に生きてきた女性が、真実の愛を見つけるまでを描いたクラシックなラブストーリー。まだ薄暗いニューヨークの朝、5番街のティファニーにタクシーで乗り付けたホリーは、ウインドウを眺めながら、紙袋からパンとコーヒーを取り出して食べ始める。アップのヘアスタイルにパールのネックレス、ブラックドレスの後ろ姿。コールガールという役どころにも関わらず、都会に妖精が舞い降りたよう。娼婦を演じても下品にならない、オードリーのエレガントな魅力は、まるでティファニーで輝く宝石のようです。
自分の本当の気持ちに気づき、どしゃぶりの雨の中で愛の告白をするホリー。自分の感情を抑えきれず、傘をさすことさえ忘れ、ポールを追って必死に駆け寄っていく姿。降りしきる雨はまるで大地の恵みのように人の心を解き放ち、潤いを与えてくれるものかもしれません。“自由”を求めて奔放に生きていたホリーが、本当に手にしたかった自由とは、愛する人を愛する心の自由と気付きます。
「愛は行動なのよ。言葉だけではだめなの。言葉だけですんだことなど一度だってなかったわ」
オードリー本人が晩年、息子ショーンに伝えた愛の言葉が思い浮かぶような、何度観ても心打たれるシーンです。
もはや説明なんていらない、名シーン。『雨に唄えば』
思わず立ち上がって踊りだしたくなるような、これほどまでの映画があるでしょうか?
アメリカ映画協会が選出したミュージカル映画第1位にも輝いた『雨に唄えば』は、1920年代、サイレント映画からトーキーへの変革期のハリウッド映画界の裏側のゴタゴタを、歌とダンスたっぷりにコミカルに描いた物語です。
ジーン・ケリー演じる売れっ子俳優とデビー・レイノルズ演じる新人女優のラブロマンスにキュン。稀代のミュージカル俳優ジーン・ケリーは、この作品で監督もつとめました。
ミュージカル映画に抵抗がある……という人も、この映画はきっと大丈夫。どの歌も自然な流れで物語に挿入されています。ハリウッドの舞台裏の話だけに、舞台装置をふんだんに使ってのダンスは華やかそのもの!
そして、この時代のスターたちは、演技・歌・踊り、その全てがパーフェクト。エンターテイナーとしての心意気抜群なスターたちが揃ったことによる完成度の高さゆえ、まるで自宅にいることを忘れてしまいそうになるほど、没入感があるんです。
迫力満点の雨の中、『SINGIN' IN THE RAIN』をジーン・ケリーが歌い踊るシーンは、今でも数々の映像作品に影響を与えた、もはや説明不要の名シーン。ですが、どうして降りしきる雨の中、彼はうたっているんでしょうか?
このシーンは、これまで本当の愛を知らなかった男性が愛を見つけた直後のナンバー。それを知ると、これまで以上にこのシーンが愛おしくなりますよね。彼女への愛と未来への希望があふれだし、それを祝福するかのごとく降り注ぐ土砂降りの雨。一点の曇りのないジーン・ケリーの幸福な笑顔。ああ、なんともアンビバレントな魅力なのでしょうか!
雨の日だってあのリズムを口ずさめば、誰もがきっと雨を好きになる。そんな気がしてなりません。
激動の変遷を遂げたハリウッドの裏側を、そして映画の歴史を勉強することもできますし、時代を超えても人々が大事にしているものや感動の周波数が同じということが、なんだか嬉しくなってしまいます。
『雨に唄えば』
製作60周年記念リマスター版ブルーレイ ¥2,619/DVD ¥1,572(ともに税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
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古来から、天の恵みと呼ばれてきた雨。ときに拍手の音のように人生の喜びをうたい、ときにどしゃぶりの涙にも寄り添ってくれる。それはどこか、映画の持つ力と似ているかもしれません。