今年こそ、自分の好きな自分に、なりたいな。それは誰しもが思うこと。自分を愛したいな。自己肯定感も高めたいし、決断できる自分にもなりたい。それには、どう自分と向き合おう? ……そこで、聞いてみました。今回お話をお伺いしたのは、個人と個人の対話を大切にしながらメディア・コミュニティ運営などを行う「me and you」の野村由芽さん。
2023/01/13 Fri.
me and you 野村由芽さん「わたしは自分と、こうして向き合ってる」
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2023/01/13 Fri.
me and you 野村由芽さん「わたしは自分と、こうして向き合ってる」
今年こそ、自分の好きな自分に、なりたいな。それは誰しもが思うこと。自分を愛したいな。自己肯定感も高めたいし、決断できる自分にもなりたい。それには、どう自分と向き合おう? ……そこで、聞いてみました。今回お話をお伺いしたのは、個人と個人の対話を大切にしながらメディア・コミュニティ運営などを行う「me and you」の野村由芽さん。
——自分と向き合うために意識していることってありますか?
自分が「いいな」って思うこととか「これって好きだな」というものに対してはもちろん、「なんかこれ嫌だな」とか「ちょっと息苦しいな」という憂いがあることも心が動くことなんだな、と思うことがあって。自分の心の動きに敏感な性格なので、常に向き合ってきました。心の中のことは自分にしかわからないからこそ、考えることが面白くて。自分はなにが好きで、なにが嫌で、それはどうしてなのか。日記に書くことで考察・記録したり、人にどう伝えるか、伝わるかを考えたりすることも興味があります。子どもの頃から、自分が見つけた、ちょっと不思議な光景を友達に話して反応を見たりしていましたね。
——日々のなかで行き詰まったり迷いが生じたときに、どうしてますか?
そうですね、どんなふうにしてるかなぁ。私は考えてしまうというか、思考がずっと頭の中を流れてるんですよね。だからときどき、「言葉」とか「考え」に疲れることも。あと、自分が心の奥底で「本当は」なにをしたいと思ってるかが、そもそもわからなくなってしまうこともあって。そんなときにしてみることが、いくつかあります。
とにかく思ったことを書き出してみる。誰に見せるでもない言葉だから、取り繕わず、書く。叫びとか、まだ言葉になっていないようなことも、ばぁーっと、書く。「こういうことばっかしちゃってる」「こういうふうにやれてない」「あれはちょっと嫌だなって思った」……。とにかく正直に。
そのときは、手を止めずにすごい速さで書きます。ちょっと立ち止まると、考え込んだり客観的な視点が入ったりしてしまうから。「点検しない自分」みたいなものを手や指先にそのままインストールさせて書くイメージですかね。なんなら手で考えているぐらいの感じで、とにかく書く。書き終えた頃には、すっきりしていることが多いです。
意味をなさない言葉をベッドの上でひらすら呟いてみる。「あ〜木と椅子がニンジンの上にあって〜」みたいな(笑)
ノートに書くことにもベッドで呟くことにも共通しているのは、頭に浮かんだ言葉を取り留めがないままに並べる、ということでしょうか。思考や言葉の使い方に自分なりの癖があるから、それを1回バラすみたいな感覚です。そうすると、自分の考えの癖がぱっとほどけて、どこか解放される瞬間があるかな。
あとは、体を物理的に違うところに置く。散歩するとか、いままで行ったことのない場所にいくとか。いつもと違う風景と自分が混ざると、凝り固まった思考や行動のパターンが組み替わるような気がします。
——常に言葉と向き合う由芽さんらしいですね。
普段からiPhoneに、いろんな気づきをメモしていて。日記の他にも、1ヵ月のはじめに「今月やりたいこと」みたいなのも書くし、「自分が助かりたいときのメモ」もあって……。
——「自分が助かりたいときのメモ」、気になります。
本当に心がちょっと崩れそうなときに、見に行くノートです。具体的な手法から感覚的なものまで、いくつか項目があって。ホーリーバジルのお茶を飲む、ニンニク注射を打つ、内側にこもりすぎず外と調和する、ロープウェイやボートに乗る……。その項目を眺めているだけで少し希望が見えてきて、ふっと、楽になるんです。
——最近よく言われる「自己肯定感」について、どう感じますか?
そうですね、あんまり「自己肯定感の高い低い」みたいな基準で、自分のことを確かめることはしていないかもしれないです。「自己肯定感」というのは多くの人が使っていてわかりやすい言葉だとは思うのですが、大きな言葉で自分を測ると、漠然としていってしまう。個人の人生から生まれる感情や性質って、もっと具体的じゃないですか。「みんなは好きじゃないけど私は好き」「みんながいいって言ってるけど、なんかちょっと違和感ある」みたいな、個の感情をなるべく手放さないでいられる瞬間を作ることが、自分を知ることなのも、と思っています。
自己肯定感が高いか低いかを考えるより、「これをしている私は好きだな」「この人と話していると居場所がある」「この場所に行くと安心できる」みたいな、自分がどんな状態だと満ち足りていられるかを細分化して、それを見つけていくことの方が大事なんじゃないかな、って個人的には思っています。
去年は、「小さく満ち足りる」ということを結構考えていました。私自身、遠くの場所にある理想や夢、自分自身が「こうありたい」と願うものに手を伸ばそうとすることが多いのですが、時にはその願いに縛られて苦しくなることもあって。そんなときに生活の身近なところにある物事の、ささやかな機微を観察してみたら、小さな満足がたくさん生まれる瞬間がありました。
——まわりからどう見られているか、気になりすぎたら?
私たちは他者といっしょに生きてるから、どんなに大事な人の間でも、距離感を見失なったり、傷つけ合ったりすることもありますよね。そうそう、他者との距離感についてのメモみたいなのもあって。
——どんなことを綴ってるんでしょうか?
人と人は、別々の川みたいだな、っていう。お互いそれぞれの速度で流れているけれど、たまに重なったり交わったりする。だからタイミングによって出会いが嬉しいこともあるし、苦しいこともある。そういう距離感を大事にしたいな、みたいなメモです。
「人からどう思われているか」って、やっぱり気になっちゃう。でも、なにかを決めるとき私は、少し大きな言葉ですが「自分はこの世界にはこういうものがあるいいと思っている」っていうことを、必ず先に置くようには、しているかなと思います。周りに飲み込まれたりさらわれたりしないために、小さなボートでもいいから、自分で櫂をもって漕げる状態にしておきたいです。
——決断力とか判断力はあるほうですか?
うーん、なにを決めるかによりますね。具体的なものは多分結構早いと思います。洋服決めるのとか、ご飯とか(笑)。けど抽象的なこととか、自分だけで決められないようなことに関しては、なかなか決断できないこともあります。むしろ、遅いことも多いです。でも「すぐ決断したほうがいい」とも、必ずしも思わなくて。トピックにもよりますが、早くイエスかノー、どっちかを決めなくてもいいんじゃないかな、って思うこともあります。判断を保留にしながら考え続けるとか、白と黒の間にあるものに耳を澄ませるとか、そういう時間を過ごすことも大事だと思うし、それも一つの判断であるというか。すぐに答えを出すのではなく、「粘り強く考え続ける」ほうが、もしかしたら胆力が必要なことも時にはあるかもしれません。
でもそれは、決断を放棄することではなく、いろんな可能性やたくさんの視点を自分の中に持つということ。考える過程や迷っている時間も大事にしながら、周りの速度に飲み込まれずに決めていけると、いいのかもと思います。
——周りの意見にゆらいだりしませんか?
もちろん、迷ったときこそ人の意見にゆさぶられそうになります。けど、周りの人の意見を聞きながらも、最終的に、自分の視点で決められるといいなと思っています。振り返ったときに「あれってなんで、そうしたんだっけ」とわからなくなってしまうとトライ&エラーがしにくいし、大切なことはなるべく自分で決めたほうが、自分を信じることを積み重ねていける気がしています。
野村由芽
編集者。2021 年に『me and you』を竹中万季と立ち上げる。メディア・コミュニティ『me and you little magazine & club』の運営や、J-WAVE ラジオ『わたしたちのスリープオーバー』のナビゲーターを務める。現代を生きるさまざまな「個人」の声に耳を傾け、個人と個人の対話を出発点に、遠くの誰かにまで想像や語りを広げる活動を行う。
撮影:yoko
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