グッモー!の挨拶から始まる井上順さんのツイッターはご存知でしょうか?
テレビや舞台でも活躍する役者であり、エンターテイナーの井上順さんの初フォトエッセイ「グッモー!✌」がパルコ出版より発売されました。
ご家族のこと、仲間のこと、仕事のこと、人生のこと……。
人生という旅をご機嫌に楽しんで生きる井上流ジャーニー♪ 軽妙な語り口で渋谷愛が炸裂する渋谷今昔リポートなども収録されています。
そんなフォトエッセイ「グッモー!✌」から2週に渡って、エピソードを少しご紹介します。
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2021/11/07 Sun.
グッモー!✌ ~井上順さんのダンディ講座~
グッモー!の挨拶から始まる井上順さんのツイッターはご存知でしょうか?
テレビや舞台でも活躍する役者であり、エンターテイナーの井上順さんの初フォトエッセイ「グッモー!✌」がパルコ出版より発売されました。
ご家族のこと、仲間のこと、仕事のこと、人生のこと……。
人生という旅をご機嫌に楽しんで生きる井上流ジャーニー♪ 軽妙な語り口で渋谷愛が炸裂する渋谷今昔リポートなども収録されています。
そんなフォトエッセイ「グッモー!✌」から2週に渡って、エピソードを少しご紹介します。
グッモー! 井上順です。
僕は渋谷生まれの渋谷育ちで、現在も渋谷に住んでいます。
毎朝ツイッターで渋谷のことや日々の出来事などをつぶやいていて、その第一声のあいさつが「グッモー (グッドモーニング)」なのです。
ツイッターをご覧になった出版社の方から、「エッセイを書いてみたら」とのオファーが。
えっ、本当? ウソ? どっちなの? これが本当だったのですよ。
ヤッタネ!! よーし、お言葉に甘えて冥土の土産に、と。むっ、ちょいと待て、この歳まで僕の家にはメイドも執事もいなかったけど。あっ、違うか。ハハハ。こんな感じの駄洒落も交えたエッセイです。
しかし長いまえがきだよね。これで終わりじゃないですよ。本編はちゃんとありますよー。
その前に軽く自己紹介を! 肩書は役者・エンタテイナー。渋谷区立大和田小学校・松濤中学校卒業。学歴は中卒です。芸能界に憧れていたわけではないけれど、いつの間にかザ・スパイダースに加入していました。と言っても、今の若い人、スパイダースをご存知ない方もたくさんいらっしゃいますよね。計算してみたら、なんと半世紀、50年以上前。まさに♬あの時僕も若かったー♬ あ、この歌もご存知ない? ハハハ。じゃあ、これは知っているかな。みんなが写真を撮るときのポーズ「ピース」、あれは僕が流行らせたのであーる。だから? 何なの? はいはい、わかりました(笑)。先に進みましょうね。とにかく中身を読んでもらうのが先決だ。
さあ、お待たせしました。毎日の生活でお疲れ気味のみなさん、肩に背負っているものを一時脇に置いて、私のエッセイを読んで、もっと疲れてください(笑)。
それでは、始まり始まり!
井上順
男のおしゃれとは
女性はいくつになってもおしゃれな人が多いなあと思う。
街を歩いて人間ウォッチングしていると、ご夫婦でも、奥さんのほうがファッショナブルで華やかだなあと思うことが多い。男性は「仕事のときはいつもスーツだからいいけど、休みの日は何を着たらいいのかわからない」という方も多いのかもしれない。
旦那さんにもっとおしゃれになってほしいなと思っている人は、旦那さんが新しいシャツでも着たら、「今日は素敵ね」とほめてあげたらどうかなあ。
僕は、新しい仕事のときは必ずひとつ新しいものを身に着けることにしている。気分も新たに、気を引き締める意味でも。
新しい仕事がいつ来てもいいように、クローゼットの引き出しには新しいネクタイ、ハンカチ、肌着、靴下がぎっしり。自分でも思わず笑ってしまうくらい大量にある。最近はインタビューで「今日はどれが新品ですか?」と聞かれることもあるのだが、「実はパンツです」なんて見せるわけにもいかないし、困っちゃうよね(笑)。
僕は「まとう」ってことが好きなのだと思う。頭のてっぺんからつま先まで。
「こんなの着てみようかな」「けっこういけるな」なんて組み合わせをあれこれ考えるのも楽しい。
普段、仕事じゃないときはニットやTシャツなどカジュアルな服装で出かけることもあるが、そんなときもジャケットは必ず持って出るようにしている。出かけた先で誰に会うかわからないし、「ちょっとお食事でも」なんて話になることもある。高級店に連れて行ってもらって相手に恥をかかせちゃいけないからね。
人と会うことが多いと、服で身を固めるということの役割がわかってくる。一緒にいる人に嫌な思いをさせちゃいけないと気を遣うようになる。
服装も気配りのひとつ。そしてサービス精神の表れでもある。おしゃれな男性がどんどん増えてくれたら楽しいね。
テーラー「マルキース」
僕のおしゃれの先生は、半世紀のつきあいになるテーラー、佐々木康雄さん。
なんと、今年80歳になる現役テーラー。
新しいテレビ番組への出演が決まったときやライブの前など、必ずスーツやジャケットを仕立ててもらいに行く。
「そういう番組ならこんなのがいいんじゃない?」「ディナーショーならこういうのは?」などと、一緒に考えてくれる頼もしい味方だ。
佐々木さんと出会っていなかったら、僕はファッションなんてそんなに興味がなかったかもしれない。
実は、佐々木さんとの出会いも六本木野獣会だ。
佐々木さんもかつては六本木で遊ぶ若者のひとりだった。最初は仲間内で佐々木さんの服がおしゃれでかっこいいと話題になり、みんな佐々木さんのつくった服を着て六本木で遊び歩くようになった。外国のファッション誌に出てきそうなスタイリッシュな集団だから、当然注目を集めるようになる。そこで、佐々木さんはモデルやデザイナーを目指す仲間たちとともに、銀座ガスホールでファッションショーを企画・開催した。それが野獣会結成のきっかけだったそうだ。
そのショーを見た渡辺プロダクションの渡邊美佐さんが「これはおもしろい」ということで相談役になった。そのころ完成したばかりの東京タワーの展望台でドドンパのダンスパーティーを開催。野獣会の存在がさらに世に知られることになった。
そんな野獣会にやって来たのが中学生の僕!
「順、かわいかったよ。いいモデルが来た!って喜んだ」と、佐々木さんは昨日のことのように言うが、気がつけばあれから半世紀以上だ。僕は佐々木さんのおかげで装う楽しみを知った。迷っていれば佐々木さんが的確にアドバイスしてくれる。まとう服によって自分の雰囲気もずいぶん変わるものだと実感したものだ。
佐々木さんは野獣会のころ21歳で独立し、28歳で自分のショップ「マルキース」を開いた。
カメラマンの立木義浩さんも当時から佐々木さんの服を愛用するひとり。佐々木さんは立木さんの奥様の手料理目当てに、立木さんの家まで仕立ての打ち合わせに出かけていたらしい。
その後、立木さんが日本テレビの深夜番組『11PM』に出演するようになると、「立木さんの着ているスーツはどこのものか?」と問い合わせが殺到。佐々木さんのショップ、マルキースは大繁盛することになった。
「人は見た目が9割」と立木さんから教わった。立木さんは撮影のときはだいたいTシャツにジーンズなのだが、大事な打ち合わせのときは佐々木さんが仕立てたスーツでキメて行く。汚い恰好だと予算を削られるが、立派な恰好をしていれば「こんな人に値切るのは失礼だ」と忖度してもらえるそうだ(笑)。
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