「ぺっこり45度」「ぱっくりピスタ~チオ」「よろけたついでに由美かおる」 など、独自の世界観でギャグを繰り出し続ける、お笑いコンビお笑いコンビ「ずん」の飯尾和樹による初のエッセイ集が12月23日からPARCO出版より発売されます。
50歳という節目を迎え、幼少期から今にいたる までを振り返り、家族、友人、恋人、芸人らとの印象的なエピソードや、ユ ニークな考え方など、肩の力を抜いて読める“飯尾節”満載の1冊から少しご紹介します。
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2019/12/16 Mon.
連載『どのみちぺっこり』第1回「母のディフェンス力」 飯尾和樹(ずん)
「ぺっこり45度」「ぱっくりピスタ~チオ」「よろけたついでに由美かおる」 など、独自の世界観でギャグを繰り出し続ける、お笑いコンビお笑いコンビ「ずん」の飯尾和樹による初のエッセイ集が12月23日からPARCO出版より発売されます。
50歳という節目を迎え、幼少期から今にいたる までを振り返り、家族、友人、恋人、芸人らとの印象的なエピソードや、ユ ニークな考え方など、肩の力を抜いて読める“飯尾節”満載の1冊から少しご紹介します。
「ところで、和樹の財布はすっかり寂しくなりまして……」
うちの母親にオレオレ詐欺の電話がかかってきたことがあります。
電話の向こうの犯人はこう言ったそうです。
「あ、オレオレ。悪いんだけどお金を用立ててくれないかな」
「あらそうなの。パパに相談するわね」
そう言った瞬間、ガチャンと切れました。詐欺グループの犯人は、電話の相手が「第三者に相談する」と言うと諦めるらしいんですが、実は母親は電話がかかってきた時点で詐欺電話だって気づいていたようです。
それまでに、両親に電話でお金の無心をしたことが何回もありました。
なぜ母親が気づいたかというと、自分がお金のお願いをするときは「お母様、あじさいの咲き乱れる季節、いかがお過ごしでしょうか。ところで、和樹の財布はすっかり寂しくなりまして……」と、いつも季節の挨拶から入り、ご機嫌を伺い、最後まで敬語で話していたからです。
息子だからといって、いつでも借りられると思い込んでいる「勘違い詐欺」です。だから、急に知らない番号から電話がかかってきて、息子だと名乗って「お金を貸してくれ」と言われても、「敬語じゃないから違うわ」と、すぐに気がついたというわけです。普段は「おふくろ」だけど、お金を借りるときだけは「お母様」と呼んでいましたから。
これまで自分がお母様に融資をお願いしたとき、きっと親父にも相談していたんでしょう。「お父さんにも相談するわ」って言われたら、恥ずかしくなって電話を切っていたかもしれません。なんで母親にはいくつになっても甘えてしまうんでしょう。
「そうなの大変ね。いいわよ、取りに来なさい」と言われると、小躍りしながら実家に向かったものです。電車に乗るお金もないので、当時住んでいた品川区から実家まで1時間くらい歩くことになるんですが、まったく苦になりませんでした。
インターフォンを鳴らして、居間でかしこまっていると母親が入ってきて「あんた、大丈夫なの~?」「この前貸した2万円も戻ってきてないわよ」と言いながらも、お金を差し出してくれました。金額はいつも1~3万円くらい。多くても年に二度までと決めていました。お金を借りると居心地が悪いもので、静かに玄関で頭を下げてすぐに実家を後にしました。
しかし、母親へのお金の無心は、身内なだけに借りるための電話にもすごい気を使うので、おかげさまで計画的に借金ができました。……って、バカ息子!
お金を借りた帰り道は、VIPになった気分で電車で帰りました。そのお金は何に使ったんでしょう。詳しくは覚えてないけれど、おそらくは生活費になって、その日だけは好きなものを食べたんでしょうね。
翌朝、パチスロもやったのかなぁ~、負けたなぁ~、歩いて帰ったなぁ~、泣いたなぁ~、キャイ~ンにおごってもらったなぁ~、事務所に前借りしたなぁ~、バカだなぁ~、ぺっこりだなぁ~。
親にはお笑いという好きな仕事を選ばせてもらって、さらに金銭面の援助もしてもらって感謝しています。
うちの両親は自由な発想の人で、もし我が家が商いをやっていても「継がなくていいよ」という親だったと思います。うちは両親ともども公務員だから、継ぐことはできないんですけどね……(その前に試験をパスする頭と努力する根性がないだろ! 自分から自分へのメッセージでした)。
定年してからは悠々自適で、夫婦で海外や国内へ旅行ばかりして帰ってきません。「今、北海道にいます」って、旅行先から写真やメールが送られてくるんです。こちらは「あら、いいじゃない」って返信したりして。
今は運良くお笑いでごはんを食べられるようになって、時々は親孝行をしなくちゃと思ったりもします。でも、お金や旅行をプレゼントしようとしても受け取らない。借金していた頃の記憶はずっと消えないんでしょうね。
唯一無二のセンスがちりばめられた、お笑いコンビ「ずん」の飯尾和樹による初エッセイ
一般発売日:2019年12月23日(月)
PARCO出版『どのみちぺっこり』紹介ページ
https://publishing.parco.jp/books/detail/?id=160
2019年12月20日(金)~2020年1月6日(月)に、渋谷パルコ地下1階のGALLERY X (名称:ギャラリー エックス)にて、「どのみちぺっこり」の刊行を記念した展覧会「ずん飯尾のどのみちぺっこり展」を開催します。「ずん」飯尾和樹の世界観に触れられる展覧会。エッセイ集の先行販売あり、展覧会オリジナルグッズ販売もあります。
飯尾和樹の誕生日にあたる12月22日には会場でのイベントも予定。年末年始に渋谷のど真ん中でぺっこり、ゴロゴロできるのは渋谷パルコのGALLERY Xだけ。
■タイトル:ずん飯尾のどのみちぺっこり展
■会期:2019年12月20日(金)~2020年1月6日(月)
■場所:GALLERY X(渋谷パルコ地下1階 / 東京都渋谷区宇田川町15−1−B1F)
■営業時間 :11:00~21:00
※初日は12:00開場 ※12月22日はイベント開催に伴い12:00~15:00は閉場
※12月31日、最終日は18:00閉場 ※2020年1月1日は休館日
■入場料:300円(税込 / 特典付き)※小学生未満無料
■主催 / 企画制作:パルコ
■協力:浅井企画
■特設サイト
https://art.parco.jp/galleryx/detail/?id=344
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