土中環境を改善するために誰でもできる身近なことを、10のアクションとして紹介している書籍「よくわかる土中環境」のなかから、先週に引き続き、今週は、「草は抜かないで刈る」をご紹介します。
~1分で読めるエンタメコラムを配信~
季節のファッショントレンドから、アート、映画、演劇、旅行などの耳より情報に、旬のイケメンまで。あなたの好奇心を満たすコラムをお届け!
2022/08/16 Tue.
よくわかる土中環境 ~土中に働きかけるアクション part2~
土中環境を改善するために誰でもできる身近なことを、10のアクションとして紹介している書籍「よくわかる土中環境」のなかから、先週に引き続き、今週は、「草は抜かないで刈る」をご紹介します。
この本を出すきっかけとなったのは、2021年7月3日に発生して多数の犠牲者を出した熱海の土石流、そしてその後の調査、そしてある小学生とのやりとりでした。
当時小学4年生の麗花さんとのやりとりで、子どもから大人まで、普段災害や自然環境から縁の遠い人たちにも伝わってゆくような本を作れるのではないか、と思ったところからこの本は始まりました。
ここ十数年、水害、土砂災害といった大規模な自然災害が毎年、私たちの記憶を塗り替えていきます。
豪雨や台風のたびに発生する災害の規模はますます大きく、広域に及び、そしてさらに身近なものになって、私たちの平穏な暮らしを揺さぶるようになりました。
どんなに豪雨が降り続いても健康な山は崩れることなく、そして沢も川も健康であれば豪雨後も清流を保ちます。
この本では、まず、山から海まで一体としてつながる自然の仕組みからお話しし、そして災害地や復旧現場の現状や問題をわかりやすく伝えることに努めました。そして、みんなで行う環境再生現場の事例の紹介とともに、土中環境を改善するために誰にでもできる身近なことを、10のアクションとして紹介しています。
この本を読んでくださった皆様が、未来に希望と喜びを感じてくれて、身近な自然を見つめ直す、そのきっかけになることが叶えば幸いです。
高田宏臣
刈っても刈っても伸びてくる草は敵! そんなふうに思っていませんか? 昔の人は、まるでやさしく飼いならすかのように草とつきあっていました。土手の形や土地の呼吸を保つために草は必要だということを、わかっていたのです。
草を排除するために刈るのではなく、土地を育てるために草を刈るのです。草刈り機で地面のきわまで刈ってしまったら、土はカチカチになり、水と空気が動かない土地をどんどん増やしていってしまいます。
土の中にたくさんの空洞を作る虫たちも、住めない環境になります。
ここでは、風を通し、土地を育て、美しく仕上げる草刈りの作法を伝えていきます。「よしよし、お前たち、ここまでここまで」と、草たちと会話しながら、ぜひ草刈りをしてください。
土中環境に悪い刈り方
根っこごと草を抜くと、掘り返された土は単粒化してしまう。
土中環境をよくする刈り方
風の通り道を作る草刈り
人が通るところだけ低く草を刈り、あとは草の上面だけをなでるようにして、かまぼこ状に刈っていく。風の通り道といって、自然に草が薄くなっているラインをみつけて低く刈るが、このラインは穏やかにカーブする流線型のようになっていて、ここに風が吹くとスーッと空気が流れ込んで抜けていく。
つる性の草の刈り方
クズやヘクソカズラのようなつる性の草が、低い木を覆うように生えている姿をよく見かけます。普通の草を刈るときは、鎌の刃を横に動かすわけですが、このようなつる性の草の場合は、手のこを縦方向に動かすとごそっと気持ちよく刈れます。刈ったそばから2のようにしてろうそく状にしますが、穴を掘ったところに縦にして複数詰めると庭の改善になります。枯れた状態でも同様に。
1⃣手のこやのこ鎌を縦に持ち、向こうから手前に動かすようにして刈り取る
2⃣適当な長さに折り曲げ、伸びたつるをグルグル巻きにしてねじって束にする。
ヤブガラシの枯らし方
フェンスや木に絡みつくヤブガラシは、花が咲くとスズメバチが集まってくるので、その前になんとかしたいもの。
刈っても抜いてもすぐに出てくる強健な草ですが、絡んでいるのを外し、根をつけた状態で巻いて、そのまま置いておけば、役目を終えたと思って自然に枯れていきます。
今回は、土中環境を改善するために誰にでもできる身近なことを、10のアクションから「草は抜かないで刈る」でした。
知らなかったですよね? お家の雑草も抜かずに刈るのが良さそうですね。
次回は最終回で、「米のとぎ汁や風呂の残り湯を土中へ」です。
よくわかる土中環境 イラスト&写真でやさしく解説
¥2,200(税込)
PARCO出版
高田宏臣
NPO法人地球守代表理事。株式会社高田造園設計事務所代表。
一般社団法人環境土木研究所代表理事。
1969年 千葉県生まれ。東京農工大学農学部林学科卒業。
1997年 独立して高田造園事務所を開設。2003~2005年 日本庭園研究会幹事。
2007年(株)高田造園設計事務所設立。2016年~2019年 NPO法人ダーチャサポート理事。2016年~ NPO法人地球守代表理事。
2022年5月 一般社団法人環境土木研究所設立 代表理事。国内外での造園・土木設計施工ののち、今は環境再生施工及び指導。土中環境の健全化、水と空気の健全な循環の視点から、住宅地、里山、奥山、保安林等の環境改善と再生の手法を提案、指導。大地の通気浸透性に配慮した伝統的な暮らしの知恵や土木造作の意義を広めている。行政や民間団体からの依頼で、環境調査、再生計画の提案、講座開催、および技術指導にあたる。
主な著書に『土中環境』(建築資料研究社)『これからの雑木の庭』(主婦の友社)、共著に地球守の自然読本シリーズ、他。
2024/09/28 Sat.
2024/09/21 Sat.
2024/01/07 Sun.
2024/01/03 Wed.