土中環境を改善するために誰でもできる身近なことを、10のアクションとして紹介している書籍「よくわかる土中環境」のなかから、「米のとぎ汁や風呂の残り湯を土中へ」と「動物の亡きがら土に還す」をご紹介します。今回は最終回です。
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2022/08/23 Tue.
よくわかる土中環境 ~土中に働きかけるアクション part3~
土中環境を改善するために誰でもできる身近なことを、10のアクションとして紹介している書籍「よくわかる土中環境」のなかから、「米のとぎ汁や風呂の残り湯を土中へ」と「動物の亡きがら土に還す」をご紹介します。今回は最終回です。
この本を出すきっかけとなったのは、2021年7月3日に発生して多数の犠牲者を出した熱海の土石流、そしてその後の調査、そしてある小学生とのやりとりでした。
当時小学4年生の麗花さんとのやりとりで、子どもから大人まで、普段災害や自然環境から縁の遠い人たちにも伝わってゆくような本を作れるのではないか、と思ったところからこの本は始まりました。
ここ十数年、水害、土砂災害といった大規模な自然災害が毎年、私たちの記憶を塗り替えていきます。
豪雨や台風のたびに発生する災害の規模はますます大きく、広域に及び、そしてさらに身近なものになって、私たちの平穏な暮らしを揺さぶるようになりました。
どんなに豪雨が降り続いても健康な山は崩れることなく、そして沢も川も健康であれば豪雨後も清流を保ちます。
この本では、まず、山から海まで一体としてつながる自然の仕組みからお話しし、そして災害地や復旧現場の現状や問題をわかりやすく伝えることに努めました。そして、みんなで行う環境再生現場の事例の紹介とともに、土中環境を改善するために誰にでもできる身近なことを、10のアクションとして紹介しています。
この本を読んでくださった皆様が、未来に希望と喜びを感じてくれて、身近な自然を見つめ直す、そのきっかけになることが叶えば幸いです。
高田宏臣
台所で毎日のように出る米のとぎ汁、野菜やめんなどのゆで汁、そして、お風呂の残り湯……。そのまま下水に流してしまうのは、もったいないと思いませんか?
いずれも栄養分が含まれるため、微生物を育てる餌になりますし、大地をうるおすことができるのですから、これを使わない手はありません。
庭に木があればその根元に、集合住宅で植木鉢やプランターに何か植えていたら、そこにまくといいでしょう。米のとぎ汁は、畑にまくのもよいです。
大地に還せるものは、還していきましょう。
庭の木のまわりにまく
米のとぎ汁(薄めない)やゆで汁などは、地面の一箇所に集中するように捨てると、そこの土が掘られて泥が流れてしまいます。
そうすると、その泥水は細かい通気孔をふさいでいきます。
木の根元に落ち葉を敷いたところにまくのがいちばんいいのですが、ザバッとまかずに、落ち葉の上全体に広がるようにまきましょう。
木の根元は最も空洞が多い場所で、微生物も多いのですが、とぎ汁をまけばとぎ汁が好きな微生物が集まってきます。そして、とぎ汁は全部分解されて、大地に還っていきます。
動物は死期を悟ると、木の根元や穴などに入っていく習性があります。土がふかふかと柔らかく、水と空気が動ているところなら、腐敗もしないで、ウジがわいたりムカデが来たりもせず、いちばんきれいに逝けるということをわかっているのです。だから、動物を葬る際には、自ら選ぶ死に場所に近い形で土に還してやりたいものです。死は終わりではなく、そこから新たな命につながっていき、それは絶え間なく循環していきます。昔は人も亡くなると土葬で葬られていましたが、現代でも奈良県の一部の地域ではその伝統が守られています。人も命の循環のなかにいるという実感を得るためにも、山に還していく土葬や自然のままに葬る風葬を、動物の埋葬をきっかけに、見直してみたらどうかと思います。
動物の手厚い葬り方
事務所の窓の外の木の根元には、猫やたぬきが10匹くらい埋まっています。車にひかれたたぬきであったり、敷地内で息絶えた猫であったりするのですが、穴を掘って土をかぶせただけでは腐敗してウジがわいてきます。
落ち葉や炭を使って手厚く葬ると、臭くもならずにそのまま静かに沈んでいきます。
動物の埋め方 「たぬきの風葬」より
① 木の根元に動物が納まるくらいの幅で、半分から2/3 が埋まる深さの穴を掘る。
② 炭(P110) を多めに敷き、グリグリをして(P111)三本鍬(さんぼんぐわ)をところどころに差し込んで、さらに炭を土の中に落とす。
③ また炭をまいてグリグリし、落ち葉を敷き詰めて、動物を置く。
④ 動物のまわりに炭を入れ、その上に落ち葉を寄せて、土を少しずつ寄せていく。
⑤ 盛った土の脇とそのまわりに炭をまき、グリグリする。
⑥ 土の上に炭をまいて落ち葉で包み、また土を寄せ、さらに炭を寄せて落ち葉を寄せる(顔は最後に)。
⑦ 炭・くん炭(P110)を全体にかけ、こんもりしたところのきわに、ところどころ炭・くん炭をまいてグリグリしていく。
⑧ 最後に落ち葉をかぶせてきれいに整える。
※ペットなどの動物の亡骸(死骸)は、飼い主が所有権を持たない場所に土葬すると不法廃棄になり、厳しい罰則が科せられます。
また飼い主が所有土地であっても、腐敗臭の発生などあれば、損害賠償請求などのトラブルが起きる可能性があるので十分注意しましょう。
土中環境を改善するために誰にでもできる身近なことを、10のアクションから3つご紹介しました。
身近にせまる災害をひとりひとりが取り組めそうなことで防災に繋がるようですね。
よくわかる土中環境 イラスト&写真でやさしく解説
¥2,200(税込)
PARCO出版
高田宏臣
NPO法人地球守代表理事。株式会社高田造園設計事務所代表。
一般社団法人環境土木研究所代表理事。
1969年 千葉県生まれ。東京農工大学農学部林学科卒業。
1997年 独立して高田造園事務所を開設。2003~2005年 日本庭園研究会幹事。
2007年(株)高田造園設計事務所設立。2016年~2019年 NPO法人ダーチャサポート理事。2016年~ NPO法人地球守代表理事。
2022年5月 一般社団法人環境土木研究所設立 代表理事。国内外での造園・土木設計施工ののち、今は環境再生施工及び指導。土中環境の健全化、水と空気の健全な循環の視点から、住宅地、里山、奥山、保安林等の環境改善と再生の手法を提案、指導。大地の通気浸透性に配慮した伝統的な暮らしの知恵や土木造作の意義を広めている。行政や民間団体からの依頼で、環境調査、再生計画の提案、講座開催、および技術指導にあたる。
主な著書に『土中環境』(建築資料研究社)『これからの雑木の庭』(主婦の友社)、共著に地球守の自然読本シリーズ、他。
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