「バーターで呼ばれることの嫉妬？　そんなもん、キャイ～ンと関根さんの舞台を観に行ったら銀河系のハジまでぶっ飛びました！」

自分が何よりも恐れているのは「業界病」です。

ノリやキャラクター、冗談ではなく、どっぷりと浸かって、しかも浮いちゃって、それを周りが笑えない……。もう笑えないってことは鼻につく、つくってことは、似合ってない……ってことは、もう悲惨ですョ。ただ黙然として天才のそばに居るだけで、自分も「時代創りました」顔。宅急便の方は、商品を安全に確実にプロフェッショナルにお届けしている。そして、その宅急便の方が届けた美味しい梨を自分も作りました顔、ノリはしてこないですよネ。
でもね、自分を過大評価している人がいるんですよ。
いろんな立場で、中にはまれに偉そうな人がいるんです。ちがうよ、あなたが偉いんじゃないよ。あなたのその奥にある番組やタレントさん、俳優さん、芸人さんと仕事がしたいんだよって。文字通り、踏ん反り返っている人もいますからね。みなさんはあなたに頭を下げてるんじゃないよって思います。
自分はそうなりたくないし、そうならないように時折、太ももをツネって気をつけてます。でも、みなさん御安心～！！　私、飯尾和樹は調子にのっても、スベったら０・01秒で新人気分へ。

20代の頃は、仕事がなくて毎日寝てばかりいました。仕事がないから起きる必要がないんで、ほぼ冬眠状態です。なんてったって、床ずれするぐらい寝てましたからね。床ずれしすぎて、つける背中がなくなっちゃって起きあがったくらい、冬だけじゃなく、春も夏も秋も……冬眠って表現はおかしいくらいに。
そんな自分たちが、たまにキャイ～ンの現場に呼ばれてついていくと、「なんだ、あの人、感じ悪いな」って思うスタッフがたまにいるんです。天野がそっと「あの人、ちょっと癖あんだよな」って教えてくれる。そういう人は、だいたい3年後にはいなくなってる。やっぱりそうなんだよな～って思ってました。

当時の数少ない仕事はキャイ～ンと一緒のことが多かった。バーター的な意味合いもあったのかな。20代の頃、自分たちのコンビにつけたキャッチフレーズが「キャイ～ンと同期」「キャイ～ンの友達」でしたから。
いつも一緒にいたし、本当に仲が良かったから、実際にスタッフさんの中にはそういう覚え方をしていた人もいたと思います。そういった意味じゃ、本来「こいつら○○○○が面白くて」の○○○○の部分がないって……（涙）。でも、覚えてもらえてよかった！……こうなったらスーパーポジティブでいきましょう。この考えも関根さんに教わったな……。関根さ～ん、ゴルフに行って笑いたいです！ 

キャイ～ンと一緒にいるのは楽しかったですね。気のいいやつらだし、彼らが売れていくのは嬉しかったですよ。まぁ、最初は「70人くらいのお客さんの前で3分ネタをやる」みたいな同じ条件でスタートして、先にバーンと行っちゃったから、やっかみようがないです。
バーターで呼ばれることの嫉妬？　そんなもん、ないですよ。
例えるならば、自分たちは100円しか持ってないのに、一緒にいると1000円の定食が食べられる。他の人が900円も出してくれるんだから、それに文句を言う奴はいないんじゃないんですかね。
それに、あの二人は昔からなんにも変わらないんです。
かれこれ28年の付き合いになります。時には厳しいことも言いますよ。あんな短い脚なのに、一時期、天野がズボンをブーツインしていた時には、思わず「おい、足なくなっちゃうよ」と指摘しましたからね。「へへっ」と笑ってごまかしてたなぁ……。
自分みたいな公務員のせがれ顔が近くにいたから、現場マネージャーだと思ってた人もいましたョ。実際、スタッフにキャイ～ンのスケジュールを聞かれたことも。
「すみませ～ん。来週はウリナリで地方なんです～」と返事しておきました。本当にスケジュールを把握するくらい一緒にいましたね。特にウドとは。

しかし、タレントにとって、ずっと一緒にいるマネージャーの存在は大きいもんです。事務所でチーフをやっているのが自分たちの初代のマネージャー。今のマネージャーさんで4人目になります。
現マネージャーさんはとても優秀で、さらにお笑いがすごく好きで、バラエティよりも「THEお笑い」という感じの番組のオファーがくると、大喜びしてくれます。
いつもちゃんと現場で見てくれていて、終わったあとには評価をしてくれる。
「今日は何点だった？」　
「80点ですね」
そう言ってくれるときは、だいたい65点なんです。気づかいも入ってますから。……ということは53点くらいか！？「ああ、やっぱりダメだったか」って……。帰り道の車の窓から見える首都高の街路灯が、季節はずれのホタルの光に見えるんです。本日は、どっちの水もに～がいよ♪
とある現場で自分なりに手応えがあって、「どうだった？」って聞いたら、「早口ですね」と言われて凹んだこともあったなぁ。致命的なダメ出しですからね。でも、はっきり言ってくれるほうがいいと思っているんです。
終わったあとに相方のやすとマネージャーが高い評価をしてくれると、やはり嬉しいものです。すぐにオンエアの日をチェックして、実際にテレビの前に座って見たりしますから。
相方のやすとマネージャーのひと言で、自分の気分は簡単に上がったり下がったりします。おそらく一番そばにいる人だし、褒められたいという思いはどこかにあるんです。

同業者に褒められるのは最高に嬉しいものです。たとえば仕事のあとに打ち上げがあって、そこで先輩や同業者の人に褒められると、嬉々として、今ならMJ、そうマイケル・ジャクソンになれるってくらいステップを踏みたくなっちゃいますね。……いや、実際に無意識でテーブルの下でムーンウォーク……。打ち上げのテーブルの下を見れば、本日の飯尾のデキばえがわかるかもです。ポー！！
仕事のあとの飲み会はいろんな本音が聞ける場なんですが、芸人同士だと、やはり褒めてくれることが多いと思うんです。みんなで互いに「面白かったなぁ」って言い合ってます。
中でも関根さんは、どんな現場でも、どんな舞台でも、いつでもどこでも、何か探して褒めてくれる人なんですけど、ある日の収録のあとに、「飯尾、この前の観たよ。紺のスーツがとても良かったよ」って言われた時は、「あぁ、他に褒めるところがなかったんだな……」って反省しました。紺なんて誰でも似合う色じゃないですか。それが数年前のこと。
でも、スーツの色で迷ったら紺色を買いますから……、関根さん今後もよろしくお願いします。

唯一無二のセンスがちりばめられた、お笑いコンビ「ずん」の飯尾和樹による初エッセイ

一般発売日：2019年12月23日(月)

書籍名：『どのみちぺっこり』著：飯尾和樹／価格：本体1,400円（税別）／頁数：192頁／発売元：PARCO出版

PARCO出版『どのみちぺっこり』紹介ページ
https://publishing.parco.jp/books/detail/?id=160

2019年12月20日（金）～2020年1月6日（月）に、渋谷パルコ地下１階のGALLERY X （名称：ギャラリー エックス）にて、「どのみちぺっこり」の刊行を記念した展覧会「ずん飯尾のどのみちぺっこり展」を開催します。「ずん」飯尾和樹の世界観に触れられる展覧会。エッセイ集の先行販売あり、展覧会オリジナルグッズ販売もあります。

飯尾和樹の誕生日にあたる12月22日には会場でのイベントも予定。年末年始に渋谷のど真ん中でぺっこり、ゴロゴロできるのは渋谷パルコのGALLERY Xだけ。

■タイトル：ずん飯尾のどのみちぺっこり展
■会期：2019年12月20日(金)～2020年1月6日(月)
■場所：GALLERY X（渋谷パルコ地下1階 / 東京都渋谷区宇田川町15−1−B1F）
■営業時間 ：11：00～21：00　
※初日は12：00開場　※12月22日はイベント開催に伴い12：00～15：00は閉場　
※12月31日、最終日は18：00閉場　※2020年1月1日は休館日
■入場料：300円（税込 / 特典付き）※小学生未満無料
■主催 / 企画制作：パルコ
■協力：浅井企画
■特設サイト

https://art.parco.jp/galleryx/detail/?id=344