

本作を監督したのは、ドリス・ヴァン・ノッテンに密着したポートレイト、『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』のライナー・ホルツェマー監督。この作品で成功を収めた彼が、また別のファッション・デザイナーを選び、その人物を追いかけて新しいドキュメンタリーを撮ることは容易なことではありませんでした。候補リストのトップにはマルタン・マルジェラの名前がありましたが、彼をカメラの前に引きずり出すことなど、どう考えても不可能だと思いこんでいたのです。だが、いくつかの理由と事情が重なり、不可能が可能に―当時、マルタン・マルジェラのすべてのコレクションの回顧展(『Margiela / Galliera 1989-2009』 )の準備中だったことが、大きな後押しとなりました。

長年、正体を明かさずに生きている、魅力的で有名な人物を撮ることが許されたのは、監督にとって嬉しくも光栄なことでした。と同時に、この映画が難しい作業になることも分かっていました。自分自身のことよりも、常に自身の作品を一般に公開することに重きを置く彼の人物像に迫るというのは難しい課題だったのです。マルタン・マルジェラのことを誰にも知られずに撮影する―カメラのフレームからすばやく彼の顔を外し、手付き、仕草、ハンドメイドへのこだわり、そして何よりも自身の作品へ注ぎ込んだ愛情から彼の存在を感じさせることに注力しました。結果、このドキュメンタリーを通して今なお健在である、自分自身や自身の作品に対する皮肉やユーモアを映し出すことに成功。彼の隠された素顔を、ぜひ劇場のスクリーンで目撃してください。


『この映画は単なるサクセス・ストーリーではない。何よりも私にとっては、自らの道を歩み続け、そのポリシーから“不滅”の存在へとなった男のストーリーである。彼は自らの幸せのために、キャリアの絶頂期に辞め、命を削るファッションの世界に背を向けた勇気ある男の物語なのだ。』
革新的、繊細で優しく、かつ大胆不敵、本質を見極め、決して妥協しない。マルジェラの創造性と仕事術、その全貌が明かされる━『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』は2021年9月17日(金)より、渋谷パルコ8Fホワイトシネクイント他、全国ロードショー!