2024年12月14日、パルコが手がける渋谷の映画館、シネクイントにて異例の映画祭が開催された。その名も「Shibuya Pilot Film Festival/渋谷パイロットフィルムフェスティバル」。初開催にも関わらず、全席ソールドアウト。世界を目指す若手監督たちの熱気、そしてパルコの新たな挑戦をレポートします。

2025/01/31 Fri.
渋谷に集結した才能:渋谷パイロットフィルムフェスティバル潜入ルポ〜前編・門外不出の映像を上映する異例の映画祭〜
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2025/01/31 Fri.
渋谷に集結した才能:渋谷パイロットフィルムフェスティバル潜入ルポ〜前編・門外不出の映像を上映する異例の映画祭〜
2024年12月14日、パルコが手がける渋谷の映画館、シネクイントにて異例の映画祭が開催された。その名も「Shibuya Pilot Film Festival/渋谷パイロットフィルムフェスティバル」。初開催にも関わらず、全席ソールドアウト。世界を目指す若手監督たちの熱気、そしてパルコの新たな挑戦をレポートします。
パイロットフィルムとは、映画制作前にテストとして制作される映像のことです。企画書や脚本だけでは伝わらない作品の魅力を、実際に映像化することで明確にし、制作チームや資金を集めるために役立てられます。そのため、一般的に公開されることは多くありません。ところが今回、このパイロットフィルムを集めて一般公開するという、異例の映画祭が開催されました。
本フェスティバルを共同主催するのは、映画『HIDARI』のパイロットフィルムを監督したWhatever Co.の川村真司監督(以降、川村氏)と、映画『KILLTUBE』のパイロットフィルムを監督したCHOCOLATE Inc.の栗林和明監督(以降、栗林氏)。
長編化を目指すこの2作品を手がける両者のフェスティバルでのトークセッションへの潜入レポートとインタビューの内容を交えてお届けします。
HIDARI (Pilot Film) - The Stop-Motion Samurai Film
劇場アニメ『KILLTUBE』Pilot film
2024年の夏。主宰の川村氏と栗林氏は、作り手の情熱を凝縮しながら、一般的に目にする機会が少ないパイロットフィルムを通して、新たなコミュニケーションを生み出したいという思いを胸に、パルコに本フェスティバルの企画を持ち込みました。多彩な才能の発掘とクリエイターの支援が、新たな価値創造に繋がると考えるパルコは、この企画案に賛同。思いが通い合い、パイロットフィルムフェスティバルの実現に漕ぎ着けました。
本フェスティバルのプログラムは、パイロットフィルムの特別上映と、監督による解説やトークセッションで構成。パイロットフィルムを通して、映画の制作を身近に感じられるイベントとなりました。
本フェスのキャラクター「パイロットくん」をあしらったオリジナルTシャツ(¥4,070)とサコッシュ(¥3,300)も販売され、初開催のフェスティバルに彩りを添えました。
第1回となる今回は、片渕須直監督の長編映画『この世界の片隅で』や、1969年に初制作されたモンキー・パンチ原作漫画の『ルパン三世(シネスコ版)』などのパイロットフィルムの特別上映や、オリジナルTVアニメーション『オッドタクシー』監督の木下麦氏とプロデューサーの伊藤裕史氏とのトークセッションなどが行われました。そのほかにも、本フェスティバルの参加作品すべてが上映される回も最終プログラムに用意され、充実した内容となりました。
今回の開催について栗林氏は「パイロットフィルムにはさまざまな形があると知り、また長編映画制作に向けた“一歩目”であるそのフィルムたちを目の当たりにしたことに、とても興奮しました」と振り返ります。一方、川村氏は「新しい発見と同時に、“僕たちの実験的な手法は間違っていなかった”という確信を得た」と話します。
—— さらに、二人は今回のプロジェクトを、こう振り返ります。
「熱量をすべて注ぎ込んだテスト映像を作り、そこから映画化を目指すという、無謀ともいえる試みにチャレンジしてきた前例があることに勇気をもらいました。そして、『テスト映像だからこそ、失敗を恐れずに進んでいこう』という、普通なら避けがちな道を選んできた先輩がたの存在を知り、自分たちもっと大胆にならなければいけないと改めて感じました。『HIDARI』長編化に向けて、大きな糧となりました」(川村氏)
「本フェスティバルで参加作品を上映したあるチームは、パイロットづくりの過程では失敗することをむしろ歓迎し、また別のチームは、わずか3カットのテスト映像で、道を切り拓いた実績を持ちます。今後の挑戦において、過去の作品例を通じてさまざまな選択肢があることを、思い知らされました。そしてなにより、巨匠と呼ばれる監督たちも、最初は苦労しながら作品を作り上げてきたことを知り、背中を押されました」(栗林氏)
「Shibuya Pilot Film Festival/渋谷パイロットフィルムフェスティバル」Trailer
それでは具体的にどんな話がなされたのか。
後半の記事では、現場でのセッション内容を交えて、紹介していきます。
左:川村真司(かわむら・まさし/Whatever Co.)
ストップモーション時代劇『HIDARI』の監督・原案・脚本を担当。Whateverのチーフクリエイティブオフィサー。180 Amsterdam、BBH New York等の世界各国のエージェンシーでCDを歴任後、PARTYを設立。2018年クリエイティブ・スタジオ Whateverをスタート。2023年Open Medical LabのCCOに就任。グローバルブランドのキャンペーン、プロダクトデザイン、MVなど活動は多岐に渡る。Creativity「世界のクリエイター50人」、Fast Company「ビジネス界で最もクリエイティブな100人」に選出される。
右:栗林和明(くりばやし・かずあき/CHOCOLATE Inc.)
2026年公開目標の劇場アニメ『KILLTUBE』監督。映像企画を中心として、空間演出、商品開発、統合コミュニケーション設計を担う。JAAAクリエイターオブザイヤー最年少メダリスト。カンヌライオンズ、スパイクスアジア、メディア芸術祭、ACCなど、国内外のアワードで、60以上の受賞。米誌Ad Age「40 under 40(世界で活躍する40歳以下の40人)」選出される。さまざまなエンターテイメントに関わる領域の知恵を越境して融合させることに可能性を感じ、その新しい作り方を実践している。
Staff Credit
Text: Hiroyoshi Tomite
Photography: Masanori Kaneshita
Edit: RCKT/Rocket Company*
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2025/02/07 Fri.
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