今を生きる現代人は、座る時間が人類史上もっとも長く、さらに生活様式が和室から洋室に移り変わりつつある今は、ひとの数だけ椅子があります。
座るという姿勢は休憩しているように思いますが、実は生物学上とても負担の強い体勢なのだとか。座り心地が人生の質を左右するといっても過言ではありません。そして座り心地とは、椅子の機能だけではなく、愛でられるのかも重要なファクターを占めるのではないかと思うのです。
座り心地がよくて、賢くて、想いが込められている、ローカルでしか生まれない椅子は森林のなかにありました。
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2020/08/18 Tue.
これからそばにいてほしい家具はプロダクト以上アート未満。行列ができる家具屋の椅子
今を生きる現代人は、座る時間が人類史上もっとも長く、さらに生活様式が和室から洋室に移り変わりつつある今は、ひとの数だけ椅子があります。
座るという姿勢は休憩しているように思いますが、実は生物学上とても負担の強い体勢なのだとか。座り心地が人生の質を左右するといっても過言ではありません。そして座り心地とは、椅子の機能だけではなく、愛でられるのかも重要なファクターを占めるのではないかと思うのです。
座り心地がよくて、賢くて、想いが込められている、ローカルでしか生まれない椅子は森林のなかにありました。

きのこではありません。ようびのホタルスツールです。日本のヒノキを伝統的な木組みの技術で加工した、まるで工藝品のようなプロダクトです。

元々、ヒノキはやわらかい材質で、家具には不向きな木材でした。しかし考えかたを変えれば、ヒノキを使えば、軽くて持ち運びやすい白肌の家具ができる。そこにイノベーションを見出した家具職人たちは試行錯誤の末、ヒノキで椅子をつくります。
また、上部のクッションを取り外すと、ミニテーブルと座布団になる賢い汎用性も兼ね揃えています。

いまの暮らしの邪魔をしないミニマムと「運命の一脚」になりえるファブリックの豊富さはまるでオーダーメイドの贅沢。注文を受けてからつくる今回は予約販売になります。

もうひとつおすすめなのは「ブックバード」。ホタルスツールがひとのとまり木ならば、ブックバードは本のとまり木です。ブックスタンドはもちろん、読んだ本のブックエンドとして、本を乗せると、本が羽のように見えるオブジェクトに。

アートのようなこだわりと使い勝手の良さが両立した家具が生まれた背景には森林の抱える問題とようびの職人たちの思いがありました。

photo:中川正子
ようびの工房があるのは岡山県西粟倉村。人口1500人ほどの小さな山村は大きな問題を抱えていました。少子高齢化、過疎地、そして村の98パーセントにも及ぶ森林のこと。
昔ほど木が使われない現代社会において、森林はローカルの負の財産となり山が荒廃しつつありました。山が荒廃すれば自然災害も増えます。そんな村で家具屋として起業したのがようびです。
森林は木を伐って使っていかなければどんどん荒れていくもの。二束三文にしかならない村のヒノキの価値をあげるため、ようびは村の森に有り余るヒノキで家具をつくります。材料としてだけではなく、森林を100年後の未来までつないでいくために。

森林と村の運命を賭けたものづくりは国内外で高い評価を得て、ちいさな村に行列ができる家具屋が誕生しました。
「ホタルスツール」の由来は西粟倉村のきれいな森林にだけ生息するヒメホタルから。ホタルスツールが暮らしをホタルのように明るく照らしますように。そして、スツールが求められるごとに西粟倉村の森がきれいなって、ヒメホタルがもっとたくさん増えますように。
そして今を生きるみなさんに彼らの家具を使って欲しいと私が思うのは、彼らの生きかたにも触れて欲しいから。彼らは「つくっているのは、家具じゃない」といいます。彼らはようびの家具を使うことで皆の生活が豊かになることを願い、ものづくりをするのです。
ようびの創業者である大島正幸さんは「うちは家具からはじまったので、家具から建築、そこに生物が集い、風景となっていくことが目的で、そのすべてが有機的につながっているのが特徴です」と話します。

写真の左から2番目が大島正幸さん。
ようびは小さな村に本社を構え、社員は15名ほど。そのほとんどが移住者です。岡山の山奥で移住して暮らすというだけでハードルの高さを感じます。
ようびの職人や社員はいつもみんな楽しそう。そんな彼らは、ものづくりは目的ではなく、手段だといいます。若者たちは小さな村で生き、各々の夢を叶え、結果として、世の中に楽しい暮らしを届けていると。
ようびの椅子を手にいれることは「消費」ではなく「生産」。私は人の想いが形になったものに囲まれて生きていきたいと思います。
Text:アサイアサミ
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