━━ 物語の舞台は、スペイン内戦下のバスク地方の街ゲルニカ。戦渦が迫る中、それでも自由を求め、たくましく生きようとする人々の群像劇になるという本作品。台本を読まれてどう感じたでしょう?
まだ第1稿の途中まで読ませていただいたところなのですが、サラや街の人たちの穏やかな日常が描かれていて。これからいろんなものが動いていって、この人々はどうなっていくんだろうと考えると胸が痛くなるんですが、強さを秘めた言葉がたくさんあるなと感じています。詩みたいに書かれた部分も出てくるので、これは歌になるのかな?と想像したり。第1稿に立ち会わせていただくこと自体初めてなので、大事に大事に読んでいます。
━━ 長田さんが萌歌さんをイメージして書いたというヒロインのサラにはどんな印象が?
サラは何不自由なく育ってきた元領主の娘なんですが、普通の物差しを持った女の子だなと感じています。自分と一般市民の立場や感覚が違うことを当たり前だとは思わずに、どうしてそうなっているんだろう?と違和感を覚えている。戦争の足音を聞いて、いろいろなことを知っていくドアの前にやっと立てたサラの中で、その違和感がどう大きくなっていくのか、どう感じ方が変わっていくのか。私自身もサラの新しい目で物事を見て、感じていきたいです。
━━ 作品のモチーフとなった「ゲルニカ」という絵のことは、以前からご存じでしたか?
はい。鹿児島で通っていた中学校に、「ゲルニカ」の複製があったんです。お話をいただいたときに、その絵を初めて見たときに感じた、動けなくなるような圧を思い出しました。写実的ではないのに、絵の中の人や動物すべてから助けを求める悲痛な叫びが聞こえてくるようで……。自分の中では、その絵とスペイン内戦がすぐには結びつかなかったので、そこに描かれている真実を知りたいと思ました。ピカソがこれは描かなきゃいけないという気持ちで描いた絵だと思うので、私もこれは伝えなきゃいけないという使命感みたいなものは、お話をいただいたときから強く感じていました。
━━萌歌さんご自身は、絵や音楽、本からインスパイアされた経験がありますか?
ちょっと答えがズレてしまうかもしれないんですが、原田マハさんの『暗幕のゲルニカ』という本を自粛生活中に読んで、すごく刺激を受けました。もともと原田さんの本が大好きで、この本のことも気になっていたので、読むならまさに今だなと思って。ピカソの「ゲルニカ」を軸に、ゲルニカの空爆とニューヨークの同時多発テロを重ねて、過去と現代を織り交ぜながら展開していくお話で、姉が原田さんと繋がっているお陰で、原田さんからも「ゲルニカ」についての知識をいただいたんです。いろんな方向から『ゲルニカ』に近づいていっている感覚があります。