古着への強い思い入れはなかった

SREUは古着をアップサイクルするブランドですが、実は僕自身、古着に対して強い思い入れはないんですよ。今40歳で、高校生の時は街を古着屋が席巻していたので、間違いなくそのブームを通ってきたとは思いますが。普段も自分から古着屋に通うというよりは、買い付けに行ったついでに「いいじゃん」と思ったものがあれば買うくらい。その時はトップスが多いですね。
ただ、物持ちがいいから高校や大学の頃に買った古着を大人になってからも着ていることがあって。材料が足りない時に、それをリメイクに回したこともあります(笑)。
「サステナブルだから」より「格好いいな」で選んでほしい

SREUが目指しているのは、古着のリメイクブランドとしてではなく、純粋にファッションブランドとして手に取ってもらえること。ちょっと古いイメージかもしれませんが、リメイクブランドって布の量が多かったり、派手だったり、「プラスしていくデザイン」という印象があります。SREUはそうではなくて、お店に並んでいる商品を「格好いいな」と手に取って、ちゃんと見た時に「リメイクだったんだ」と気づくようなものを目指しています。
最近はサステナビリティへの意識が高まっていて、その中でSREUが注目を集めることもあります。ただ、「サステナブルだから」ではなく「格好いいな」で手に取ってほしいですね。実際そう受け入れてもらえている手応えもあります。
僕たちとしては、「フルギニレース」の頃から取り組んでいることは変わっていないんですよ。変化したのは社会のほうで、同じことを続けているうちにだんだんサステナブルとか、廃棄をなくそうという声が強くなっていったので。社会的意義みたいなものもスタート時点では考えていませんでしたし、たまたまその枠組みの中にSREUが入っていただけだと思っています。
サステナビリティ、日本と海外の意識の違いとは?

日本でバイヤーの方と話していると、「リメイク」「アップサイクル」といった言葉に強く反応してくれます。一方、海外のバイヤーの方と話していると「リメイクブランドだから」ではなく「このデザインいいね」で買ってくれていると感じます。
海外ではもう、今の日本の段階はとっくに過ぎているんじゃないですかね。その方が健全だし、僕の考える売れ方に近いです。日本では、サステナブルやSDGsという言葉は一過性のブームみたいになっている。このまま流行語みたいになって消費されて終わってしまうような気もしています。
ただ、サステナビリティよりデザイン性で手にとってほしいと考える一方で、サステナブルであることはしっかり意識しています。具体的には、2021年の秋冬にはサステナブルマテリアルの使用率が70パーセントだったのを、2023年の春夏までに100パーセントにしたいと考えています。100パーセントのほうがわかりやすいし、ブランドとしても格好良いじゃないですか。
新しい生地を使うのではなく、古着、リサイクル生地、それから企業で余ってしまった生地など、幅広く使って100パーセントを目指したいですね。そこまでやるのは大変かもしれないけど、糸やファスナー、ボタンなどもサステナブルマテリアルで作れないかなとも考えています。
「ものづくり」の概念が、他の人よりも広い

最近気づいたことなんですけど、僕は「ものをつくる」ことの概念が、他の人よりも広い気がしています。吉祥寺にある「コマグラカフェ」をはじめ、洋服だけじゃなくて飲食もやっているし……料理の盛りつけも、店の内装を考えるのも、どれも「ものづくり」だと捉えているんですよね。


SREUも同じで、「洋服を作る」というより広い意味での「ものづくり」として取り組んでいます。SREUはデザイナーの植木沙織がアイテムのデザインやサンプル作りを担当していて、それ以外のブランドロゴをやショーのことをディレクションしているのが僕という棲み分け。植木は体に近い服を作って、自分はブランド自体を作っていく、という感覚でいますね。
そういえば、過去にはリニューアル前の渋谷パルコで、友達や自分が気になるブランドを集めたセレクトショップを作ったこともありました。その時は自分で床にモルタルを塗りましたよ。僕、左官屋の息子なので。
色々なことをやっていますが、どれも最初は勢いです。「事業計画を作って、次はこうして〜」みたいなのは、むしろ苦手ですね(笑)。
古着の買い時は「気に入ったらすぐ」

古着の魅力は、やっぱり「一つしかない」ということ。デザインもそうですし、細かな縫製の仕様や微妙なシルエットなども今のアイテムにはないものがあります。そういう細かいところを見ながら選べるようになると、古着を買うのがどんどん楽しくなっていくと思います。
これから古着を買ってみたいと思っている人には、「気に入ったらすぐに買った方がいいよ」と伝えたいですね。古着は基本的に一点ものだから、今度にしようと思っているとだいたいなくなってます。あるとしたら、その店の回転が悪いのかもしれない(笑)。古着を買うのも、勢いが大切なんです。
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筆者あとがき
インタビュー内にあるように、アパレルブランドから飲食店の経営など、米田さんは広い意味での様々な「ものづくり」に取り組んでいます。何かを始めるときは迷いや不安をつい気にしてしまいますが、まずは勢いで飛び込んでみることが、米田さんのように活動を楽しむ秘訣なのでしょう。
Brand Information
SREU(スリュー)

2016年、前身となる古着リメイクブランド「フルギニレース」をスタート。2019年にSREUとしてリブランディングし、古着やリサイクルマテリアルを活用したアイテムを製作している。ファッションデザイナーの植木沙織がデザインを、米田年範がディレクターを担当する。