「大変だけど気楽」な古着リメイク

SREUは2016年に前身の「フルギニレース」というブランドからスタートしました。もともと僕が経営していたセレクトショップでリメイクブランドのアイテムを扱っていたのですが、現在SREUでデザイナーを務めている植木沙織から「こういうのなら、自分たちで作ることもできるんじゃない?」と話が出て。まず作ってみて、反応がよかったので展示会を開いて、そのまま卸をスタートしました。「ブランドをはじめたい!」という強い思いがずっとあったというより、成り行きと勢いで生まれたブランドですね。

古着のリメイクって、大変だけど気楽な部分もあります。普通ブランドを立ち上げる時は、パターンや生地選びなど色々準備が必要になりますが、リメイクの場合はすでに古着という素材があって、そこにどうアプローチしていくかが重要。そのやり方が自分たちに合っていたことが、気軽にはじめられた要因だったと思いますね。
SREUにリブランディングしたのは2019年。海外のコレクションに出した時に、「フルギニレース」という日本語のブランド名だと覚えてもらいにくかったことが理由です。みんなで案を持ち寄って、サステナブル(Sustainable)、リメイク(REmake)、アップサイクル(Upcycle)の頭の文字を取ってSREUになりました。
古着だけではなく、リサイクルマテリアルを積極的に取り入れていく方向性になったのもリブランディングのタイミングです。リサイクルマテリアルはその名の通り不要になった生地や素材をリサイクルしたものですが、ウールの落ち綿を使った生地、ペットボトルを衣料用の素材として再生させた生地など、たくさん種類があります。これからも技術の発展にあわせてどんどん新しい素材が出てきそうで、可能性を感じていますね。
黒のTシャツを100着でも、プリントや色味はすべて「一点もの」

これまでに何度かコレクションを発表していますが、印象に残っているのは2022SSで発表した綿やデニムの古着にプリーツ加工を施したアイテム。ポケット部分までプリーツ加工をしたものもあります。
これは生地屋さんとお話ししていて、「綿でもプリーツできるんですよ」と聞いたことがきっかけ。工場の方に無理やり「失敗してもいいんで!」とお願いして作ってもらいました。プリーツ自体はよくあるけど、綿やデニムで、かつ古着にっていうのは珍しくて。古着は状態が均一じゃないので、安定した加工ができるようになるまでは試行錯誤がありました。といっても、一番大変だったのは工場の方たちだと思いますが(笑)。
SREUは量産できるものづくりを意識しているものの、古着を使っているので、アイテムはどれも一点ものです。だからバイヤーの方が「黒のTシャツを100着」と買い付けても、プリント、色味、生地の風合いなどすべてバラバラなんですよ。正直、中にはイメージと違うアイテムもあると思うのですが、逆に一点ものの面白さを強みに売ってもらえているみたいで、うれしいなと思っています。
売れ残った洋服を、もう一度サイクルに乗せる

最初は買い付けの仕方もわからなかったので、素材として使っている古着は自分たちで古着屋をまわって探していました。オーダー数量が増えていくにつれて、国内の卸業者に頼んだり、自分たちで海外まで買い付けに行ったりするようになりましたね。最近は(コロナ禍により)海外に行けていないので、ほとんど国内の業者さんに頼っています。
海外の買い付けはいろいろ印象に残っていますよ。タイで買い付けをした時にAirBnBに泊まったら、4階の部屋なのにエレベーターがなくて、買い付けた大量の古着を持って上がるのがめちゃくちゃ大変だったとか(笑)。その時は50キロくらい買ったので、持ち運ぶのが本当に大変でした。

古着の仕入れって、いわゆる良い古着を買おうと思ったら欧米に行く方がいいんですよ。ただ、僕たちはそういう古着を探しているわけではないので。タイなどの東南アジアは欧米で余ったものが流れてくるので、そのぶん安いのがメリットですね。他にも、通常の古着屋さんが買い付けて、デッドストックになっているものをまとめて安く買うこともあります。

そのままでは売れ残ってしまうものを買い取って、SREUとしてもう一回アイテムとしてサイクルに乗せていこう、という考えがあります。リメイクはもし生地に穴が空いていればその部分を避けて使えばいいし、デザインも自由に変えられる。いくらでもやりようがあるんですよね。
デニムが手に入らない謎。古着市場にも変化があるという驚き

僕の中で、古着といえばデニムというイメージがありました。デニムパンツとか、デニムジャケットですね。最初はそういうアイテムがたくさん手に入るだろうと思っていたのですが、意外と見つからないんですよ。古着屋の倉庫には洋服がたくさんあるのに。
なぜかというと、デニムは以前は大量に流通していたけど、多くが買われていって今は市場が枯渇しているからなんだそうです。知った時は、古着市場にも変化があるんだなあって驚きましたね。デニムはプリーツ加工のアイテム含めてSREUではけっこう使っているのですが、年々手に入りにくくなっている気がします。自分たちは素材としてサイズや色にこだわりすぎずに購入しているからまだ選択肢があるけれど、これ、っていうジャストなものを探そうとすると見つからないし、あっても値段が高くなっています。原価が上がってしまうので、こうしたアイテムはSREUでは使っていません。
高価なヴィンテージアイテムもSREUでは使わないようにしています。値段が上がってしまうし、今はブランドとしてもまだそのタイミングではないなって。ただ、いつか別ラインで特別なものとして挑戦してみたいと思っています。
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SREUというブランドと、そのアイテムができるまでを語ってくれた米田さん。古着リメイクの視点を通すと、「すべて一点もの」という古着の個性や市場の特徴が新しい魅力を放って見えるのではないでしょうか。
次回後編では、サステナビリティとファッションの関係や、米田さんの「ものづくり」との向き合い方をうかがいました。後編は3月7日公開予定です。
Brand Information
SREU(スリュー)

2016年、前身となる古着リメイクブランド「フルギニレース」をスタート。2019年にSREUとしてリブランディングし、古着やリサイクルマテリアルを活用したアイテムを製作している。ファッションデザイナーの植木沙織がデザインを、米田年範がディレクターを担当する。