― おふたりは、水丸さんのイラストはどんなところがお好きですか?
貴島:難しいですね。「一本の水平線」という水丸さんの画集がありますけど、まさに一本の線だけで水丸さんのイラストだとわかるところですね。クラフト感もありますし、ヘタウマの境地というか……大好きです。
林:とにかく愛らしいですよね。でも可愛らしいだけでなく、飄々とした人柄が感じられるし、対象を冷静に見ているところが魅力だと思います。
― 長場さんのイラストはどうですか?
林:長場さんのイラストは発明ですよね。そう言うと本人は嫌がるかもしれないですけど(笑)。最初に見たときの衝撃はやばかったです。
貴島:長場さんのE.T.見たことあります?あのシンプルな線だけでE.T.に見せるっていうことは、的確に線を捉えているってことで。E.T.ってシワシワだからいっぱい線が必要じゃないですか。それをシンプルな線で表現するのはすごいです。
― 今回のラグもそうですが、女の子も1本の線で表現されていますよね。
貴島:怒ってる表情、悲しんでる表情……もう表情全部、線1本で表現しているのはすごいですよね。それも素敵な女性に見えるし、おしゃれ。
林:ちょうどいい可愛さというか、可愛すぎないのも好きです。今回のラグも女の子の顔が入っているけど、ちゃんとインテリアとしても使える可愛さなんですよね。
― お部屋に置きたいイラストだなと思います。長場さんご本人は今回のラグについて、どんな反応でしたか?
林:ちょうど昨日サンプルを見てもらったんですけど、喜んでくださっていました。「いいね、かわいい〜」って、裸足で踏んでましたね(笑)。
― 長場さんのラグはサイズ的にも、玄関マットやベッドサイドに置かれるのかなと思うのですが、それぞれ今回のラグはどんな場所に置かれるのが似合いそうでしょうか?
貴島:最近ちょっとおもしろい発見があって。ふつう家具って、用途や目的があって、その後どれにするか選ぶと思うんです。ものを収納したいからチェストを買ったり、勉強したいからデスクを買ったり。
うちが最初にラグの制作を始めたときはマットサイズのみだったので、玄関に置くための玄関マットからスタートしました。だけどアートラグを始めてみると、買ってくれる方が「玄関マットがほしいお客さん」じゃなくなったんです。「玄関に必要だからマットを買う」ということではなく、そのラグを見て「これならここにおいたら可愛い」という考え方で買ってくれるようになった。それはこれまであまりなかった思考でした。
林:すごい!
貴島:それはおもしろい発見で、こっちも意図してないとこに置き始めたりするんですよ。たとえば今回の水丸さんのラグだったらサンプルチェックの時に「子ども部屋に合いそう」という話が出たんですけど、もともと子ども部屋用のラグとして作ったわけじゃないですよね。でもこのラグを見た人が、とくに子ども部屋用のラグを探していたわけじゃいけど、子ども部屋におきたいと思って買う。そういうふうに発想が逆転するのは、アートに少し近いんじゃないかと思います。だからみんなアートラグは、部屋のわりと適当なところに置いていたりしますね。「何用」ということではなく。
林:いままでだと、たとえば勉強机の下に敷くカーペットだったら暖かくなくていいし、埃が溜まりにくいものがいい、みたいなところから探していたと思うけど、最近パシフィカさんのサイトに載っているラグを見て、どこに置くかは決めてないけど可愛いから買うみたいなことをしていますね(笑)。
貴島:うちも前までは商品イメージとして玄関に置いて撮影していたんですけど、もうやめたんですよ。この前は巨大アンプの前に置いてみたりして、何用?って感じですけど(笑)。