—仲村さんには46枚の絵札、外箱などにも使用されたイラストを描いていただきましたが、苦労したポイントは?
仲村:何よりも46枚描くことが大変でした。今までこんなに多くのイラストを一度に描いたことがなかったので、とにかく現場の様子が想像できる札のラフから手をつけていきました。1枚描くのに何時間かかるのか考え、毎日何枚描かないといけないかを計算して、計画を立て遂行していく。マラソンのような制作でした(笑)。ラフを描き終えて全体像を見たときには、倉庫の仕事のときにも感じたように、物流の現場には「外には見えてこないドラマ」があって、いろんな人やものが関わっているんだなあと改めて感じました。
カルタの絵札全46枚
カルタの読み札
野中:仲村さんのイラスト、物流のことをすごく想像しやすかったです。よくわからないなと思っていた世界の解像度が確実に上がりました。カルタをつくることを通して、「物流をかっこよく見せたい」「面白いと思ってほしい」という思いを持っているCAPESのような企業があるということを知ったのも新しい発見でした。
—ふたりの、特にお気に入りのイラストを教えてください。
仲村:いろいろあるんですよね……(笑)。もともと普段自分が描いているパターンのイラストと、そんなに描いてこなかったパターンのイラスト、どちらもカルタに盛り込んでいるんです。たとえば、「う」の運送ドライバーさん、「ね」の熱中飴を舐めている人、「ん」のダンボールとか。これらは「人の表情やポーズをポップに描く」という、自分のなかでの王道パターンで描けたかな、と。
左から、【う】運送ドライバーさんにはただただ感謝、【ね】熱中飴食べて熱中症対策、【ん】ん〜それは出荷できる!
仲村:あとは「ま」の間口設計、「み」のミルクラン、「ほ」の歩行帯の札ですかね。「ま」と「ほ」にいたってはラフとも大きく変えていて。ラフ制作時には納得していたつもりだったのですが、本番を制作しているときにどうもしっくりこなくて、普段とは違うスタイルで描いてみたらうまくいったので、気に入っています。お仕事として、いただいたテーマに応えようとすると、これまでになかった自分の新しいスタイルが出てくるんです。それがすごく面白いといつも感じています。
左から、【ま】間口設計ってまじむずい、【み】ミルクランで回ればいけるんじゃない?、【ほ】歩行帯はつくりましょう
野中:私は「つ」の札も好きです。ぽつんとしたダンボールがかわいい。無機物に愛着が湧いてしまって、家にあるダンボールをちょっと大切にしたくなりました(笑)。
【つ】の絵札。「積み込み漏れない?」
—「い」の札の「LOVE」と言っている女の子がカルタの外箱のデザインにも使われていますよね。
野中:通称「ラブ子ちゃん」ですね。外箱に関しては、物流感を全面に出すよりは、物流業界でこんな商品が出たのか! という驚きを大事にしたいとCAPESさんから伺っていたので、作業着やダンボールのキャラクターではなく、一見物流とは全然関係なさそうなラブ子ちゃんを選びました。物流のことを何も知らずに見た人も、ちょっと手に取ってみたくなるようなキャッチーな魅力があるキャラクターですよね。
【い】の絵札。「いつ見ても物流センターは萌える」
カルタの外箱のデザイン。【い】の札の「ラブ子ちゃん」がモチーフとなっている。
—箱の側面の小さなキャラクターたちもかわいいですね。
仲村:歩行帯のイラストをもとに、カルタの札に出てくるキャラクターを歩かせてみました。やっぱりたくさんキャラクターが生まれたので、僕も愛着が湧いてきていて(笑)。それで箱にも出したいと思ったんです。
野中:ほかにも、受け取った人が難しく考えすぎないように用語解説の縁を仲村さんのイラストで飾ったり、札の裏にも手書き文字を入れたりして、ちょっと力の抜けた感じを演出しました。