-おふたりが環境問題に関心を持つようになったきっかけを教えてください
小野さん「北海道で育ったこと、旅行でいろんな場所に連れて行ってもらったことで自然と触れ合う機会が多かったです。母の友人に環境活動家がいて、世界で起きているいろいろな問題について教わっていたこともあり、子供の頃から関心は持っていました」
佐座さん「私の場合は、映画『もののけ姫』で主人公が人間と自然がどう共に生きるかと問うシーンを子供ながらにすごくしっくりきたことを覚えています」
-温暖化や環境問題に関してどんな危機感を持っていますか?
佐座さん「いろんな危機感を持っています。例えば、以前行ったヨルダンには死海がありますが、もともと大きな湖だったのがどんどん小さくなっています。温暖化が進んでいることも要因ですが、死海の塩をすくって持って帰っている人も多いのです。人間は、自然から搾取することが多くて、返す作業が少ない。今使っている資源をなんで最良にしていかないのか。そこにはシステムの問題もあると思っています」
小野さん「温暖化が進むことで海面が上昇し、このままでは住めなくなる島があります。その島で暮らしている人たちの声を聞きに行ったり、研究している人の話を聞いたりしていると、環境問題だけではなく社会構造の問題も見えてきます。これは、人権の問題でもあって、私たちひとりひとりが生きていけるかどうかにつながることでもあるから他人事ではないです」
-今回の『SHIBUYA COP2021』の取り組みでも掲げている、2050年までに温度上昇を1.5℃未満に抑えることの重要性をどう考えていますか。
小野さん「もし1.5℃未満に抑えられなかったら、そこからどんなに頑張っても温暖化を止めることができなくなるという予測が出ているほど、恐ろしい数字。2050年までに1.5℃未満に抑えることはとても厳しい状況なんです。もし抑えることができなかったらどんなことが起きるの?と思っている人もいると思うんですが、その影響はすでに出ています。例えば、夏の気温が35℃を超える日が今では当たり前になっていることもそのひとつです」
佐座さん「世界的に見ても、2021年今年の夏は熱波で亡くなった方が多かった。このままでは地球上で人が暮らせる場所が限られてきて、場所の取り合いが起きるかもしれないし、実際に食糧問題の争いが起きています。温暖化に関しては、40年以上前から言われていたこと。それなのに、これまで策を講じてこなかったから危機的状況になっています。この現実を信じるか信じないか、ひとりひとりの気持ち次第だと思っています」
-以前に比べると、温暖化や環境問題について考える機会は増えていると思いますが、なかなか身近なこととして捉えにくいところがあるように思います。
佐座さん「どうやったら環境問題を自分事化できるか。正解はありませんが、ひとりひとりが私生活の中で行動を変えることはできます。例えば、ペットボトル飲料を買うのではなくマイボトルを持ち歩く。1週間のうち1回はお肉を食べない日を作ってみるなど。先日、新しいバッグを買ったのですが、ヴィーガンレザー製を選びました。いろんなライフスタイルがあるので、オプションを選ぶ感覚で考えて選択していければいいのかなと思います」
小野さん「私自身、子供の頃から環境問題に関心は持っていたものの、なかなか行動を起こせずにいました。そんな中で、デンマークの学校に通っていた24歳のときに気候変動にはタイムリミットがあることを知ったんです。この問題は後回しにできないことであり、今やらないと後悔すると強く思いました。同じ時期に、環境問題について話ができる同世代の友達ができたことも後押しとなり、日本に帰ってきてから気候変動に特化したNGOを探してボランティア活動をしたり、少しずつ仕事場でも環境の話をするようになったり、SNSで発信するようになりました。環境問題については今も勉強を続けていて、ひとつずつ知っていくことが行動につながっています。今は、世界中の連帯が必要。みんなと一緒に歩めるように、声を掛けながら一緒にやっていこうよって。みんなが仲間という状態が理想図です」
佐座さん「私と りりあんも、渋谷COPのメンバーひとりひとりも、同じ目標に向かっているけど、それぞれのやり方があります。それでいいんだと思います」
小野さん「ドイツで暮らしている友人が、活動家ではない人はいないって言っていました。いるのは、現状を知って1.5℃未満に抑えるための活動家か、無意識のうちに上昇を手助けしている活動家のどちらかだって」
-では、2050年はどんな未来を創造したいですか?
佐座さん「もし1.5℃の目標が成し遂げられたら、都心にいても緑豊かな世界が広がっているだろうし、生物多様性に満ちた、共有し合う文化の根付いた町のあるべき姿を見ることができると思います。自然から搾取ばかりしていたこれまでの構図から、きちんと返していく循環型の未来を創造していきたいです。楽しみにしていてください!」
小野さん「たとえ1.5℃目標が達成できなかったとしても、気温上昇の速度をできるだけ遅くして、できるだけ多くの人間が順応できるように時間稼ぎをしながら、やっぱり協力していくしかないと思うんです。権利や利益じゃなく、愛に基づいた思考の働かせ方で、老若男女がみんなで手を取り合って行動していけるのが私はすごく楽しい。この楽しさに気が付く人が増えれば、未来のために行動する人も増えていくと思っています。ひとりひとりの幸せを目指して、わたしたちは生きていかなければならないんですから」
佐座さん「より良い未来にしたいと思って暮らしている人たちは生き生きしているように思います。私たちは思考して、励まし合って、人も環境も大切にし合いながらつながっていく未来が来てほしいと思っています」