2023年2月に閉店した津田沼PARCO。それに伴いショップの陳列棚やポスターボード、店頭のロゴサイン等はその役目を終えました。それを廃棄するのではなく技術やデザインの力でアップサイクルし、新しいデザインや付加価値を生み出すのが、津田沼PARCOのアップサイクルプロジェクト。今回は、当プロジェクトでコラボレーションした靴職人・三澤則行さんにインタビューしました。
2023/10/26 Thu.
垂れ幕の端切れが、靴に生まれ変わる。津田沼PARCOのアップサイクルプロジェクト
~1分で読めるエンタメコラムを配信~
季節のファッショントレンドから、アート、映画、演劇、旅行などの耳より情報に、旬のイケメンまで。あなたの好奇心を満たすコラムをお届け!
2023/10/26 Thu.
垂れ幕の端切れが、靴に生まれ変わる。津田沼PARCOのアップサイクルプロジェクト
2023年2月に閉店した津田沼PARCO。それに伴いショップの陳列棚やポスターボード、店頭のロゴサイン等はその役目を終えました。それを廃棄するのではなく技術やデザインの力でアップサイクルし、新しいデザインや付加価値を生み出すのが、津田沼PARCOのアップサイクルプロジェクト。今回は、当プロジェクトでコラボレーションした靴職人・三澤則行さんにインタビューしました。
― 三澤さんが靴職人を目指した経緯は?
大学生時代、通学路にオープンした靴屋さんに出合い、そこで見た靴の美しさに衝撃を受けました。それ以来そのお店へ通う中で「靴は作れるものだ」ということを知り、靴職人になりたいという思いで志すようになりました。東京・浅草で7年間学び、オリジナリティの探求のためヨーロッパ、ウィーンへ留学しました。約2年間の現地での生活の中で、アートに触れ、のめり込みました。その体験が基となり、靴作りとアートの融合を自分のオリジナリティとし、現在に至ります。
― 三澤さんは機能美を兼ね備えた靴の「芸術性」に魅了されたということですが、靴の美しさとは、どんなところにあると思いますか。
「足」は、人間の器官の中でも最も複雑な骨の構造を持ちます。そんな複雑な「足」から機能を損なわずできあがる形は他にはない独特の形状をしています。それが美しさでもあります。
― オーダーメイドで作られる靴は、既成品とはどう違いますか。
既成靴を作るには、まず基となる一つの木型を製作し、その後型紙を起こします。その作業が何百、何千、何万という生産数に繋がります。しかしオーダーメイドではその作業は一足の靴のためだけにあります。それだけ贅沢に作られた靴は当然足にフィットし、美しいものになります。
― 靴職人として活動されるにあたり、大切にしていることは?
仕事として成り立たせるには、工場で機械で作らないといけない。手作りで靴を作る靴職人という仕事は、本来100年以上前に消滅したような仕事です。そんな中、このような仕事を2020年代にやれているのは、普通じゃないことです。一足一足、感謝を忘れずに作っています。
― 最近のご活動について教えてください。
『鉄腕アトム』の一つのプロジェクトを通してコラボレーションさせてもらったり、従来の靴職人の仕事からはかけ離れたような仕事の依頼をいただいています。来年2月にはニューヨーク、そしてパリコレクション会場での展示のお話もいただいています。これからも靴職人という枠にとらわれず、新しいことにどんどん挑戦していきたいです。
― これからはどんな活動をされたいですか。
発展途上国に滞在し、靴作りを通して現地で産業を作っていきたいです。
― 本プロジェクトを通じて、お客さまへどういったことを伝えたいですか?
20代の修業時代はお金がなかったというのはもちろんありますが、毎日のように工房のゴミ箱をチェックしては使える革材をもらい、それを使って靴づくりをしていました。本来は破棄されるものが自分の技術によって蘇り、命が与えられる、という感覚が好きでした。その感覚は独立して工房を立ち上げてからも、私にとって大事なものです。お客様への靴づくりから生じた廃棄される素材を、アート作品製作に生かしています。
「アップサイクル」という考え方は、私のものづくりの根幹にあります。本プロジェクトのお話をいただいたときは、「きっといいものができる」という自信がありました。津田沼PARCOでたくさんのお客様を迎え入れた出入り口のテントは意味を持つ素材で、この素材により靴にストーリーが生まれる。そしてパルコらしいアートワークの懸垂幕により、靴にアート性が宿りお客様に響くポップなものになります。
こちらの靴は、外注には出さずうちの工房で手づくりにより製作しています。利益は出ませんが、この靴が少しでも広まれば、近い将来に必ず利益が出る仕組みにもできると思います。多くの人々、特に若い世代のお客様に届いて欲しいと思いますし、届いてくれると思います。そんな期待を込めて、本プロジェクトに参加させていただきました。
― PARCOとの思い出、何かありますか?
私にとってPARCOさんは、いち商業施設ではなく、特別な存在です。上京してからの20代の頃は頻繁に渋谷PARCOさんに通いました。本屋さんに靴に関する洋書を探しに行き、そのついでに靴のデザインアイデアのためにお客さんの履いている靴を一日中観察したり、ポスターデザインに見入ったり。そんなルーティンができあがっていました。PARCOさんで開催されたシューズデザイナー「ヤン・ヤンセン展」を見に行ったのも記憶に残っています。
― ちなみに。最近のお気に入りの靴はなんですか?
最近のお気に入りは、「JOHN LOBB」のEVAソールのブーツです。スニーカーのようなふわふわしたはき心地が気に入っています。「NIKE」のエアジョーダン収集にもハマっていますね。
津田沼PARCOを愛してくれたすべてのお客さまへ、感謝を込めたプロジェクト。アップサイクルについて思いを寄せるきっかけにしてみては?
※Noriyuki Misawa(ノリユキ ミサワ)ショップは、10/26よりOPEN!
三澤則行
靴職人/アーティスト、宮城県出身。幼い頃から母親の趣味である美術画集に囲まれて育ち、工作や絵画に没頭した少年時代を送る。大学時代地元のとある革靴店との偶然の出合いから靴づくりの道に飛び込む。それから靴職人として東京とオーストリア・ウィーンで10年間修業。帰国後2011年に自分の工房を構え、ビスポークの靴づくりを続けながら、日本の伝統工芸の芸術家や工芸家の下で学び表現の幅を広げる。靴作りに携わって20年、現在もなお「靴の芸術」というあらたな価値を探求し続けている。
★お知らせ★
PARCO JOURNALのWEBサイトがオープンしました!
いままでパルコの公式アプリ「POCKET PARCO」でしか読めなかった記事も、WEBサイトですべて読めるようになりました。
ぜひ「PARCO JOURNAL」をお気に入り登録して、いろいろな記事をお楽しみください。
2024/11/20 Wed.
2024/03/29 Fri.
2024/02/23 Fri.
2024/02/16 Fri.